戦いのあと

行ってきたんだ。
合コン。


合コンってなに?
それは、
「幹事以外は見知らぬ者である男女が複数名集まって、酒を飲んで、お話をする。」
ということ。


今回僕はある後輩に誘われたんだ。
その後輩は体育会の後輩だけど同じ部活じゃなかったし、
知り合ったのは僕が卒業してからで、
今まで一緒に合コンに一緒に行ったことは無いし、
普通の飲みも1回くらい。


でも彼に僕は結構偉そうなことを言い聞かせてたんだ。
「日常から限界を超えるんだよ。」
「中途半端にやるならなにもしないほうがマシ」
「人生に妥協するなよ」
とか。
超精神論。


勝手な僕の思い込みかもしれないけど、
彼は僕をストイックで尊敬できる先輩、
と思ってくれていたんじゃないかな。


今回の合コンでも、相手がみな30overだということを、
しきりに謝って、
「すいません、穴埋めは必ずしますから!キャピキャピの若い娘を。。」
って、気の使いよう。
だから僕は、
「いいんだよ。むしろ。」
と大人の余裕を見せたね。


そんな彼の僕に対する尊敬のイメージも今回で完全に破綻。
なぜって、彼は僕の合コンにおける戦いの雄姿を今までみたことがなかったからね。


僕は戦った。
一瞬の油断がシラケを生むという地獄の中で戦った。
途中、相手に言われた。
「向こうのテーブルに負けてるよ」
相手は六本木で遊び倒してるファイターらしいんだ。


「降参も退却も無い。我々にあるのは戦いか、死かだ。」
僕は後輩とその同僚に言った。


そして、話したよ。
徹底的に。
袋オナニーの話もした。


そうしたら、腕を組んで対決姿勢だった牙城一角が崩れだしたんだ。
「きた!」
こうなったらもう何を話してもウケる。
そういう流れを感じたんだ。


「切り込んで来い。」
僕は横にいる後輩の同僚に指令を出した。


京大の院出のまじめそうな彼は、
精一杯戦った。


そう、決して一人で戦ってはいけない。
これはチームスポーツなのだから。


そして気がつけば僕が超ドMという話になって、
後輩たちからも呼び捨てでタメ語で話される状況になったんだ。


「きた」
また思ったんだけど、これがどういう段階なのかはわからない。
でも、場が楽しい方向に向かっているのはいいことだった。


2次会ではついに、
ゲームオブキング、
つまり
王様ゲーム
が始まったんだ。


内容はありきたりなものだったよ。


その頃には僕はもう完全に酩酊していて、
話す能力を失いつつあったから、
あまり話さなくなった。


僕はとなりの女性にもたれかかったり、
腕を組んだり、その他もろもろ甘えていて、
「いいかげんにしろ!」
と後輩にすら怒られるていたらくだった。


ただひたすら、
いろんなゲームをして、
夜が明けていったんだ。



始発の山の手線で、
ずっと甘えさせてくれていた女性と一緒に帰ることになった。
車内は結構、朝早くから人が多かった。


僕は電車の中で接吻をし、体を触った。
彼女もこたえた。


僕が、
「帰るの?」
と聞くと、
「今日は帰る」
って。


携帯を誰とも交換せずに、
そのまま僕は家に帰った。


倒れるように眠り込んで、
昼過ぎに起きて、
嫌な気分だったんだ。


最低のことをしたんじゃないだろうかって。
僕という人間は心底汚れているんじゃないだろうかって。


でも、自己嫌悪は卑怯なことだから、
しないことに決めたんだ。


自分で自分の評価はしない。
だから感謝することにした。
今後二度と会わないだろうあの人に。


「昨晩、全女性を代表して僕を甘えさせてくれてありがとう。」