占い〜後編〜

かく言うわけで、占い師に会ってきた。


待ち合わせ場所に向かう途中、メールが来た。

「着きました!某所階段で絵を広げています。」

しかして絵を階段に広げ、そのよこに一人の青年が座っていた。

「あ、どーもどーも。よろしくおねがいしますー。」

普通に挨拶をした。

ビデオ撮影の許可を貰いたいのだが、なんかタイミングが違う気がした。


近くの喫茶店へ移動。

先程階段で広げていた絵は、抽象画のようで、なにやら渦が巻いていたり、

流れ、のようなものが描かれていた。

それが2枚。

それは、今回占って貰う、2人をあらわした絵だという。

その絵の根拠を問うたら、

占星術によっているという。

冥王星って、やっぱ問題ですか、と聞きたかったが、

やめといた。

おもむろに、

「ビデオでとらせてもらって大丈夫ですか?
 なんか僕が適当にうそ言ってると思われるのもやなんで、証拠、じゃないですけど、よかったら・・。」

と聞いたら、

「いいですよ。遠方のかたですもんね。」

と、快諾。

2次会で流すビデオで使いたいんだが、それをいうのは今ではない気がしたので、やめた。

30分ほど、2人に関する占い。

ヨメについては俺も良く知らんので当たっているのか分からないが、

男についてはよく性格があたっていた気がした。

一通り、占い終わって、ビデオを止めた。


正直、この時点で占いよりも、この青年がなぜ占いをやるようになったか、

に興味がいったので、根掘り葉掘り質問した。

関西の超進学校からこの私大へ。

「世に変化を起こすのは私大から以外ありえない」

とのこと。

彼の半生を聞くと、敏感な感受性をもった男なんだと思った。

「占いは、あたるとかあたらないとかじゃないんです。」

その世界では有名らしい先生に弟子入りし、

今まで、総勢900〜1000人くらい見てきたそうだ。

今は、絵の個展を開いたり、映画の脚本を書いたりと、アート系なんだそうである。

ゆくゆくは劇団をつくりたいらしい。

ずいぶんクリエィティブじゃんか。

それならば、と俺も負けていられず、夏に作った童話を披露してみた。

目を閉じた鳥の話である。


そうしたら、

「あぁ・・・」

といったまま、話さない。

どうしたのか、あきれたのかと、問えば、

「感動してるんです」

という。

うそー。


悪い気がしなかったので、

青年とディープに話しまくった。

知識と知性、「生きてる感じ」について、表現するということ、物語の起源、

信じることと物質的な存在、論理と言葉、命題の限界、演劇と映画、思い出せないくらいの内容を。

知ったように。

青年が言った。
「生身の人間の世界観でこれだけ感動したのは久々です。
 脳の普段使わない部分が、刺激されるようです。」

うそー。

俺はうそはついちゃいないがね。

青年は、手でものを書くジェスチャーをしながら、
「書くべきですよ。」

俺は、
「そんなんじゃないから。」
といった。
でも内心、まんざらでもねぇぜって思った。
ただ俺は、超ストイックなだけ。

かれこれ2時間くらい深海で話すべき話をした後、
「飯を食いにいきましょう」
ということで、飯を食いに行った。

今青年が取り組んでいる、映画の脚本の概要、映画への情熱の話。

青年の今後の話。

「結婚。僕は宇宙と結婚したい。いつか宇宙を振り向かせたいんです。」

という。

「でも、もしも宇宙が振り向いたら、君は消えちゃうんじゃない?
 振り向かせちゃいけないものな気がするよ。」

俺は、絶対に引かない。

なぜなら、こいつは本気で話しているとおもったから、

とことん付き合ってやろうと思ったのだ。

こいつは、マジだ。

この話を明日、職場ですれば、笑い話で終わる。

それはそれでいい。

でも俺は心からは笑えない。

変なやつ。

妙なシンパシーを感じた。


「今度、飲みながらでも、宇宙の話の続きをするか
 あ、今日のビデオ、2次会のときに流したいんだけどいいかな・・。」

「いいですよ。占いが出てくるなんて、おもしろいビデオですね。」

じゃ。

そういって、別れた。


いい話のようだが、きっちり占い料金はとられた。

俺の話に感動したなら、ただにしてくれてもいいのに、

と思ったのだった。